抄録
ヒザラガイの摂餌器官である歯舌には、磁鉄鉱を形成する大側歯の存在が知られている。この大側歯は、ヒザラガイの種類に応じて形態が異なり、またその配列数も数十から百近くまで変化する。構成鉱物として、磁鉄鉱の存在はほぼ普遍的に確認されているが、水酸化鉄の存在やヒドロキシアパタイトの有無は種によって変化する。化学組成からは、様々な重金属の濃集の他に、カルシウムの濃度が高いものと少ないものの2種類に大別される。本研究では、カルシウム濃度の高く、ヒドロキシアパタイトの存在が確認されているAcantopleura japonicaとカルシウム濃度の低いAcantochitona achatesの2種類のヒザラガイの歯舌について、生体鉱物化過程の解明を目的として様々な鉱物学的解析を行った。