抄録
「はやぶさ」探査機は2005年11月に小惑星イトカワに着陸し、その表層サンプルの採取を試みた[1]。サンプリングは予定どおりにはおこなわれなかったが、大きさ数十ミクロンの少数の粒子が採集されたと期待されている。サンプルカプセルは2010年6月に地球に無事帰還し、現在開封作業がおこなわれている。サンプル粒子が存在すれば、最初の1年間での初期分析とその後の公募研究がおこなわれる予定である。これにより(a)イトカワの表面物質(反射スペクトルから推定された平衡LLコンドライトであるか)、(b)前世代天体での諸過程とイトカワへの集積過程(角礫化の有無、衝撃の程度など)、(c)宇宙環境との相互作用(宇宙風化の実証、太陽風酸素同位体組成など)、(d)小惑星表面へ降り注ぐ物質(例えば、地球上で汚染されていない有機物など)が明らかされるであろう。