抄録
沈み込み帯の火成岩類の成因には,沈み込んだ海洋地殻由来の成分(スラブ由来成分)が重要な役割を果たしていると考えられる.その場合のスラブ由来成分は,それぞれの沈み込み帯の条件によって様々な性質を示すはずである.本研究では,海嶺沈み込みによって形成されたと考えられる北上山地の前期白亜紀火成岩類と,海嶺拡大直後の沈み込みによって形成されたと考えられるオマーンオフィオライト中の後期火成岩類を例として取り上げ,それらに認められる沈み込み成分の特徴について議論した.その結果,北上山地の前期白亜紀火成岩類では,高圧下でのスラブメルティングによって形成されたアダカイト質メルトが重要な役割を果たしたと考えられる.一方,オマーンオフィオライト中の後期火成活動では,沈み込みの開始に伴って低圧下でスラブメルティングが起こった可能性が考えられる.