国際海洋掘削計画では,表層浅部の海洋地殻掘削にも関わらず, コアの回収率が低く,回収される岩相も掘削しやすい相に偏る傾向があるという問題が指摘されてきた.実際にどのような岩相を掘削しているか把握するために,代替のアプローチが必要となる.その有力な候補が,石油掘削の現場で主に用いられている孔内計測の手法である(ボアホールロギング).国際海洋掘削計画では1989年から導入されてきた手法であるが,そのデータを最大限に生かして実際に海洋地殻の形成解明のサイエンスに発展させたのは,近年掘削されたODP Hole 801C, IODP Hole U1309D, 1256Dのみである.特に1256Dの結果は,超深部掘削においてロギングおよび坑内物性計測の重要性を明確にした.現時点のロギングツールは石油鉱区開発の環境設定を基準としており,モホール計画で使用するには地殻の岩相温度によってかなりの深度制限を受ける.他のエンジニアリングの開発推進と同時に,高温に耐えうるツールの開発と,それを実現する為の技術者と技術を鍛錬するテスト掘削航海が強く望まれる.