抄録
近年、地球温暖化対策として二酸化炭素の地下貯留技術が研究されているが、炭酸塩の生成速度の遅さから、実用化には未だ問題を抱えている。一方で天然の変成岩中や付加体中には、方解石の鉱物脈が普遍的に存在しており、天然環境下で多量の炭酸塩を生成するメカニズムが存在していると考えられる。
これを受けて、この研究では方解石の析出に関する要因を解明することを目的とする。まず方解石の溶解度に大きな影響を与える温度変化を利用し、300度、30MPaの条件で熱水流通実験を行い、方解石の析出を試みた。
実験には溶解管と析出管を接続した熱水流通装置を用い、溶解管には粒径1-2mmに砕いた石灰石を封入し、その後ろの析出管には方解石成長を確認するための基盤(5x5x15mm)を封入した。方解石の溶解度は高温ほど減少するため、蒸留水を溶解管から析出管へ一定速度で流し、溶解管の温度を100度、析出管を300度に保持して析出を試みた。10日間の実験後、基盤に方解石が析出し、その総重量増加は0.051gであった。基盤の表面をSEMと薄片資料作成により観察した結果、基盤の方解石から0.02-0.03mmの成長が観察された。