抄録
安達太良火山の12万年前の噴火は、最近25万年間のマグマ供給系の転換点であったとされている。また、安達太良山頂降下火砕物と湯川及び元山火砕流、岳軽石はいずれも12万年前に噴出したとされている。これらの噴出物の噴出順序を解明するとともに、噴火時のマグマの組成変化を明らかにし、マグマ供給系の転換を伴う噴火変遷の解明を試みた。12万年前の噴火推移は、各噴出物の噴出順序、山頂降下火砕物の層相及びinman法に基づく淘汰度から検討した。初期は淘汰が悪い層と焼結した火山砂層が卓越するため、噴煙柱が低い不安定な噴火と比較的小規模な噴火を繰り返していた。中期では淘汰が比較的良いため、安定した噴煙柱を維持する噴火が支配的であった。後期では淘汰は悪く、火砕流も複数回発生していたため、噴煙柱は不安定であった。末期では淘汰は良くなった後、アグルチネートが噴出しているため、再び噴煙柱が安定し、その後小規模な噴火に推移していった。