抄録
北海道東部には,西から阿寒,屈斜路,アトサヌプリおよび摩周カルデラが密集する.本地域ではカルデラ形成に関与したと思われるVEI=5以上の噴火(巨大噴火)の中心が東へ移動し,最新の巨大噴火は活火山である摩周カルデラから900年前に生じた.本講演では,最新のデータを基に本地域の巨大噴火の頻度や噴出率を見積もり,各カルデラのマグマ系について議論する.
巨大噴火によるテフラの総体積は1000 km3以上と見積もられ,最近170万年間の平均噴出率は約0.6 km3/kyである.この間,40万年~20万年前の間の休止期を境に,0.2 km3/kyだった噴出率が2.0 km3/kyに急増し,この高噴出率は3.5 ka以降のアトサヌプリ・摩周カルデラの活動期に入っても衰えていない.
阿寒,屈斜路,摩周カルデラのマグマ組成は液相濃集元素量で明瞭に区別できるが,アトサヌプリのマグマ組成は屈斜路カルデラのそれに類似する.