抄録
これまでの上部マントル深部条件のカンラン石の流動特性の報告は転位クリープに限られ、高温高圧下の拡散クリープによる変形挙動は全くわかっていない。このため、本研究では細粒試料(粒径約1 um)を用いた高温高圧変実験を高エネルギー加速器研究機構、PF-AR、NE7 に設置のD-DIA 装置(D-CAP) を用いて行った。実験中の試料の差応力は50 keV の放射光単色X 線を用いた2次元X 線回折により、歪はX 線ラジオグラフィーにより決定した。 温度1473-1573 K、圧力3.0-5.3 GPa、歪速度9 × 10^-6~2 × 10^-4 s-1 の条件で、応力-歪曲線を決定した。無水条件下での歪速度-応力の関係を0.1, 300 MPaでのデータと組み合わせて解析した結果、カンラン石の拡散クリープと転位律速粒界すべりの活性化体積はそれぞれ約7 cm3/molと約11 cm^3/mol求められた。この結果をもとに見積もると、上部マントルの幅広い深さ、温度条件下で拡散クリープが支配的であることが示唆される。