抄録
山梨県北部には甲府花崗閃緑岩体が露出し,御岳昇仙峡型,徳和型,芦川型,小烏型の4岩体に区分される.御岳昇仙峡型花崗岩は,詳細な研究例に乏しく,その形成過程について詳細に議論されていない.筆者らは,鏡下観察,帯磁率測定,化学組成などに基づいて,その形成過程を考察する.
本岩体は,中~粗粒黒雲母花崗岩,細~中粒ざくろ石含有両雲母花崗岩,中~粗粒両雲母花崗岩,斑状花崗岩からなる.また,本岩体の帯磁率を測定した結果,チタン鉄鉱系に区分された.本岩体のシリカ含有量は,76.3~78.0 wt.%の幅に集中した.
本岩体は,野外観察の結果から,上位からざくろ石含有両雲母花崗岩,斑状花崗岩,両雲母花崗岩,黒雲母花崗岩が位置する.また,鏡下観察でマグマ混合を示す組織が見られたことから,本岩体は伊豆小笠原弧の衝突により生じたマグマと,その熱により四万十帯が溶融して生じたマグマの混合により形成された.