抄録
本研究では地殻の代表的鉱物、斜長石の端成分、アノーサイト多結晶体のパルス法による弾性波速度測定を高温高圧その場観察の手法を用いて行った。その結果、常温常圧での弾性波速度はVP = 7.01 km/s、VS = 3.75 km/sとなった。アノーサイトの安定領域では、温度が上昇するとともに弾性波速度は急激に低下し、約240℃を境に上昇に転じ、およそ700℃でまた低下する。アノーサイトは常圧において237℃でP 格子から高温型I格子 に相転移することが知られており、速度変化はこの相転移に伴うものと考えられる。また、圧力を上げるとVSは低下し、VP, VΦは約3GPaまで変化しないかやや上昇するが、その後低下する。アノーサイトは準安定領域において2.5GPaで高圧型I格子に 相転移をするが、この速度低下は構造変化に伴うソフトニングによっていると考えられる。