抄録
本発表では,黒瀬川帯に分布する青色片岩相の変成岩類に対して実施した年代学的な研究について報告する.五木地域の藍閃石フェンジャイト片岩から得られたジルコンのU-Pb年代値は,420-3300 Maであり,特に420-530 Maに年代が集中する.一方,阿南地域の珪岩からは,430-2500 MaのジルコンU-Pb年代が得られた.今回新たに得られた砕屑性ジルコンのU-Pb年代には,420 Ma以降の年代が認められない.このことから,420 Ma以前に存在した後背地から供給された堆積岩類が,海洋地殻起源の玄武岩と共に沈み込んだことが示唆される.また,円行寺の藍閃石岩に含まれる火成岩起源のジルコンからは,480-520 Maの原岩形成年代が得られ,この結果は砕屑性ジルコンの年代と矛盾しない.発表では,黒瀬川帯の他調査地域に分布する泥質片岩などのジルコンU-Pb年代も合わせて議論を行う.