抄録
非晶質炭酸カルシウム(以下ACC)はバイオミネラルの前駆体として存在するが、近年、合成ACCが加圧によっても結晶化することが報告された。ACCの圧力誘起の結晶化の際にはACCから水分が放出されていることが観察されており、水分が圧力誘起の結晶化のメカニズムに関与していることが考えられる。今実験では無水のACCの合成を試みることで、圧力誘起の結晶化における水分の関与について明らかにすることを目的とした。実験室内でACCを合成し、240℃で1時間大気中で加熱することで低水分量のACCを作成することに成功した。水分量の多いACCは室温下で0.24 GPaで10分間加圧することで結晶化が起こるが、低水分試料は室温下で0.8 GPaで10分間加圧したところ結晶化が起こらなかったことから、ACCの圧力誘起結晶化過程には水が関与していることが示唆された。