地殻流体は沈み込み帯で生じている内陸地震に密接に関係すると考えられているが,流体を起因とする岩石破壊現象に関しては,その素過程を地質学的な証拠に基づいて研究した例は少ない.本研究で我々は日本3大カルストの1つである平尾台において,大理石からなるカタクレーサイト様の破砕岩が露出することを発見した.この破砕岩は平尾台中央部において2ヵ所で観察され,円形,また扁平状の特徴的な分布を示す.この破砕岩とその近傍の大理石にのみ多量の流体包有物が認められる事から,この変形には地殻流体が関与した事が明らかとなった。また,破砕岩を構成する方解石の変形微細組織観察及び化学組成分析,流体包有物の均質化温度測定を行った結果,高温高圧の流体が関与して引き起こされた破砕である可能性が高いことも明らかとなった.また,変形に関与した流体は花崗岩マグマに関与する流体である可能性が考えられる.