蛇紋岩の仮晶組織は、その形成過程を考察する上で重要な組織である。本研究では福井県大島半島の蛇紋岩について、偏光顕微鏡観察、X線回折分析、SEM-EDS分析を行い、代表的試料を選んでTEMを用いた微細組織観察を行った。当地域の蛇紋岩は網目状組織及び脈状組織を主とする。脈状組織の中心部は磁鉄鉱、polygonal serpentineから、脈の外側は蛇紋石、パイロオーロ石からなる。脈状組織付近の網目状組織はリムが複数層からなり、外側リム、外側/内側リム境界、内側リムに分帯され、数度にわたる形成環境の変遷が示唆される。さらに、外側/内側リム境界付近、コア/リム境界付近には、粒径300 nm程度のアワルワ鉱(Ni3Fe)が微細粒子として多数存在し、還元的な形成環境を示す。本地域の蛇紋石はAl, Ni, Feなどが少なく、蛇紋岩化の際にFe, Niが放出され、金属鉱物を形成したと考えられる。