フィリピン海プレートの過去の運動については,理論的復元や広域地質に基づく研究などあるが,現在のスラブは,関東地域下の一部で非地震性になっており,その構造は不明瞭である.一方,島弧火山岩の化学組成は,スラブからの寄与や,マントルでの生成条件を介し,スラブの分布とその変遷を記録している.本研究では,関東山地に産する火山岩のK-Ar年代を決定することで,火山フロントの移動と,その原因としてのテクトニクスとマントル構造の変遷を議論する.
周辺地域の火山活動史を含めて考えると,約3Maに,火山フロントが現在の位置に移ったことが分かった.オイラー極が北へ移り,フィリピン海プレートの進路が北西へ変化したことで,スラブの寄与が西へ及んだと考えられる.これに伴い,マントルウェッジがより冷たくなり,フィリピン海スラブおよび太平洋スラブからの脱水深度が変わり,マントル構造とメルト分布が大きく変化したと推定される