抄録
マグマの粘性は結晶量の増加とともに上昇し,マグマが噴火できるか否かを決定づける結晶度や粘性の閾値が存在すると考えられている.しかし実際には,理論的に予測される粘性閾値よりも高い粘性を持つマグマが噴出することも知られている.本研究では,高結晶度の軽石・溶岩(アンデス山脈の計6噴火)中の斑晶組織を,X線CTを用いて3次元的に観察し,その結果を理論・実験的に予測される噴火閾値と比較を行った.重要な観察結果として,35~51vol%の斑晶量の範囲で斑晶サイズ分布の傾きに変化が無いことなどがあげられる.過去の実験から,本研究のマグマは流動中に斑晶破砕が進行すると期待されるが,そのような組織は,明瞭には見られない.これは,マグマ上昇前に気泡が形成されるなどして,斑晶破砕が抑制された可能性を示唆する.そのような気泡形成が高結晶度・高粘性マグマの上昇・噴火を可能にしているのかもしれない.