抄録
鹿児島県の鬼界カルデラに位置する薩摩竹島の玄武岩質溶岩中に最大径約1cmの灰長石巨晶が発見された。その灰長石巨晶はわずかに光学的累帯構造を示している。反射電子像、元素の線分析及び面分析から、化学組成の波動累帯構造も確認された。結晶成長形に沿って微小な不透明鉱物の包有物が見られ、反射電子像と定性分析により、以下の4つのタイプの微小包有物が確認された:(1)鉄を含む多孔質なもの、(2)鉄を含む板状のもの、(3)鉄を含む塊状のもの、(4)鉄を含み銅と硫黄に富む部分と空隙を有するもの。このように、光学的及び化学的波動累帯構造からは灰長石の融点付近の狭い範囲で温度、圧力、あるいは水蒸気圧が振動したことが暗示される一方で、微小包有物からは灰長石巨晶を生成したマグマの酸化還元環境の多様性が示唆される。