地球マントルの深さ660 km付近での地震波不連続の要因と考えられているポストスピネル相転移の相境界のクラペイロン勾配は、マントル対流の様式に影響を与える重要なパラメータである。本研究では、Mg2SiO4リングウッダイト, MgSiO3ペロブスカイトおよびMgOの落下溶解熱測定を行うことにより、ポストスピネル相転移に伴うエンタルピー変化を再決定した。さらに、新たに得られた相転移エンタルピー値を用いることにより、ポストスピネル相転移境界線を熱力学的に再検討した。相転移境界のクラペイロン勾配は1873 Kにおいて-1.2±0.3 MPa/Kと求められた。ポストスピネル相転移がマントル対流に対して障害となる効果は小さいと考えられる。