大陸クラトン下のマントルは海洋やオフクラトンのマントルに比べてMgとSiに富むという特異な化学組成を有している。本研究では、このような特異な化学組成をもつクラトンマントルが含水条件下で形成したのではないかと考え、FeOやアルカリ元素を含む主要10成分からなるパイロライトの部分融解実験を上部マントルの広い圧力範囲で行った。実験結果からクラトンマントルは含水部分融解による単純な融け残り岩であると考えられる。クラトンのマントルでは海洋地域に比べて5%以上の地震波高速度異常や2ケタ程度の低電気伝導度といった測地学的異常も報告されている。クラトンマントルが含水条件で大規模部分融解をし、H2O成分がほぼすべてメルトに分配されて系から抜き去られ、結果として現在、非常に無水であると考えると、これらの測地学的異常も包括的に解釈できそうである。