抄録
脈状ならびに晶洞型の花崗岩質ペグマタイトを比較するため、3つの産地の長石および石英の内部組織を観察し、長石の組成を測定した。晶洞型である田上と苗木産の長石に見られるパーサイトの幅は脈状である石川産に比べて狭く、母相のOr成分が少ない。これは、晶洞型は脈状より小規模で、急速に冷却するためと考えられる。また、晶洞型に産する長石の端成分に近いOr相やAb相の存在、著しい汚濁から、晶洞型は花崗岩体の天井部に晶洞を形成するため、天井部から周囲の岩体に迸入する脈状のものより熱水の影響を受けていると考えられる。晶洞型に産する文象部の石英のCL像に見られる丸みを帯びた成長組織は、結晶表面のラフニングとメルトからの成長を示唆しており、晶洞内水晶のファセットな成長縞は熱水が関与したと考えられる。脈状に産する石英には成長縞が観察されず、熱水期への変化は捉えられていない。