抄録
クリストバライトは,酸性熱水変質生成物として広く産出し,典型的な熱水反応条件である約220°Cでα-β相転移を示す。本研究では,クリストバライトの熱水反応実験によって起こる結晶化過程を解析した。クリストバライト粉末XRDの最強ピークは,高角度側で半価幅の小さなピークと,低角度側で半価幅のより大きなピークの重畳と思われる非対称性を示す。これは,α-β相転移はunquenchableであるものの,β相の準安定相としての結晶化過程や熱履歴が低温相の結晶性に痕跡を残している可能性を示す。熱水反応実験の結果,300°Cでの実験生成物において,高角度側ピークの回折角減少と半価幅拡大が見られた。また,非晶質相含有量がより多い試料において,低角度側ピークを与える相の増加と半価幅減少が見られた。熱水性クリストバライトが示す結晶学的性質は,形成温度とα-β転移温度との関係を示す指標となる可能性がある。