抄録
我々は,岩手火山1686年噴火によって得られたスコリア中のカンラン石メルト包有物29個に対して,揮発性成分量およびPb同位体比の分析を行った.Pb同位体比の観点からは,岩手火山のマグマは,枯渇したマントル(DMM)+ 沈み込んだスラブ成分(スラブ起源流体) + 地殻物質の混合物とみなすことができる.中央海嶺玄武岩や他の島弧火山の噴出物と比較した場合に,岩手火山のマグマのFのClの含有量は低い.これらの観察事実より,本研究では,(1)岩手火山直下のスラブの表面温度が非常に低い(650℃から700℃)ことと,(2)スラブの脱水に際して角閃石の分解が起こっていること,を議論した.