月隕石からシリカ高圧相が最近発見され、月の天体衝突史が明らかとなってきた。今回、月隕石NWA2727からコーサイトと共存するモガナイトが初めて見出された。本研究では地球に産するモガナイトのDAC実験から相転移の温度・圧力条件を決定し、それをもとにNWA2727が受けた衝突過程を明らかにする。DACを用いたラマン分光分析によるその場観察から、モガナイトのラマンピークはその場観察ならびに回収物ともに23 GPa付近で強度の急激な減少を示し、37-42 GPaの試料ではピークは検出されなかった。NWA2727には衝撃溶融脈が存在し、それから離れた領域にモガナイトは石英と微晶質をなし、外縁部にはコーサイトが認められる。溶融脈中ではモガナイトがクリストバライト、コーサイトおよびシリカガラスと共存する。相転移条件から、溶融脈の最大到達温度は900℃以上、衝撃圧力は23 GPa以下と推定される。