抄録
沈み込み帯形成初期におけるウェッジマントルの温度・組成構造の変化を解明することは,海洋下のマントルがどのようにして島弧下マントルへと転換し,島弧―海溝系として進化していくかを理解するための鍵である。特に初生マグマの地球化学的特徴は,その起源物質の直接的な情報を有する点で貴重である。本講演では,伊豆―小笠原―マリアナ弧の沈み込み帯創成期(約48-44 Ma)に活動した無人岩マグマ由来のクロムスピネルに捕獲されたメルト包有物から見出された初生無人岩マグマについて報告する。小笠原群島の初生無人岩マグマは枯渇した高Si無人岩(23.2 wt% MgO)と枯渇度の低い低Si無人岩(18.8 wt% MgO)があり,それぞれ0.8 GPa―1420 °C,0.9 GPa―1380°Cで生成した。グアム島では,より枯渇度の低い初生無人岩組成(15.2 wt% MgO)が得られた。