抄録
蔵王火山は,東北日本第四紀火山フロントを代表する成層火山である。五色岳はその中央付近に位置する,約2千年前の活動によって形成された小規模の山体である。本研究では五色岳形成初期の噴出物を対象に,その形成過程とマグマ組成の時間変化について検討を行った。五色岳初期の噴出物は,振子滝溶岩,五色岳南方溶岩,五色岳南部火砕岩類,五色岳東部火砕岩類に分類される。どのユニットの岩石も普通輝石-斜方輝石安山岩である。斑晶の多くに汚濁帯またはパッチ状構造など溶融組織が認められる。五色岳初期噴出物は全て,中間カリウム・カルクアルカリ系列に属する。全岩SiO2量は56~58wt%と変化幅が狭い。SiO2組成変化図では,どのユニットも概ね一連のトレンドに乗るように見えるが,より詳しく見ると,五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩の火山弾のみやや異なる傾向が見られる。