抄録
菱刈鉱山は九州南部に位置する浅熱水性の鉱脈型金銀鉱床であり,世界的にも高品位な金鉱床として知られている. 本研究では山神鉱床の祥泉5 脈,D70KE立入れ坑道中に露出した鉱脈を対象とし, 組織観察と酸素同位体測定を行っていく. 鉱脈は2つのpolyaxial veinから成り立ち, それぞれがealry veinとlate veinに該当すると思われる.鉱脈はバンド状構造を示しており,石英バンドは脈幅<1 mm ~<10 cm,粘土鉱物バンドは幅<1 cmであり,鉱化が進むにつれて脈幅が増加していく傾向が見られた.最終的には石英結晶の晶洞を生じている.鉱石鉱物はエレクトラム,黄鉄鉱,輝安鉱を主とし,方鉛鉱,閃亜鉛鉱,黄銅鉱,Ag-Te系鉱物,Ag-Sb-S系鉱物を少量含む.この祥泉5脈から採取した鉱石サンプル全体に対し酸素同位体測定を行っている.