Journal of UOEH
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キシリトール輸液による腎蓚酸石灰沈着の臨床病理学的研究
小出 紀
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1979 年 1 巻 4 号 p. 399-407

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抄録
病理解剖例中に, 腎の尿細管内結晶沈着症例が多発した時期を経験し, 本結晶沈着に関する臨床病理学的検討を行った。結晶は, 偏光顕微鏡的, 組織化学的, 生化学的検索から蓚酸石灰結晶と同定された。これら蓚酸石灰結晶の集合は, 基質として中性乃至酸性粘液多糖類を有するものと考えられた。蓚酸石灰結晶沈着は, 10%キシリトール溶液の静脈内注入が盛んに行われていた時期に多発し, 非投与群との比較, 基礎疾患との関連性などの検討によっても, 明らかにキシリトール投与と関係があることが示された。しかしながら, ラット60匹を用い, 種々の条件下で過量のキシリトール腹腔内注入を行った実験では, 腎結晶沈着は認めなかった。キシリトール投与に関連した本病態の発現に関して, 文献的考察を加えた。その発生機序は明らかではないが, 高滲透圧性キシリトール溶液の大量急速注入による異常代謝過程の発現が推定された。
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© 1979 産業医科大学
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