抄録
ローソン石青色片岩(LBS)は地下深部への水の重要なキャリアーであるとされている(Hacker et al.,2003)。本研究では、九州の八代地方に産するLBSの、鉱物共生関係を詳細に検討した。その結果、調査地域東部ではパンペリー石-ナトリウム角閃石, 中部ではローソン石-パンペリー石-ナトリウム角閃石、西部では ローソン石-ナトリウム角閃石-ナトリウム輝石の組み合わせが卓越することが分かった。これらの鉱物組み合わせの変化はNCMASH系の相図から、温度圧力上昇に伴うことが分かった。また、ナトリウム角閃石の化学組成は東部のリーベック閃石組成から西部の藍閃石組成へ、また、ナトリウム輝石のXJdは東部の0.2から西部の0.6に向かって増加する。このLBS岩体は地下18-25kmまで沈み込んだ海洋地殻が、沈み込み当時の温度圧力状態を保持したまま地表に上昇した岩体であると結論づけられる。