抄録
深海底のマンガン堆積物において,続成作用における有機物の分解に伴う還元がマンガン堆積物中の重金属元素の挙動に大きく影響を及ぼすと推察されているが,実験による検討はほとんどなされていない.そこで本研究では,続成作用を模擬したマンガンノジュールの還元に伴う溶解,重金属元素の挙動,鉱物変化について実験的に検討した.実験は,反応容器にマンガンノジュール試料と還元剤の溶液を封入し,マンガン酸化物-溶液を岩石/水比1:1000として一定期間放置するバッチ式で行った.反応物は反応期間後,フィルターを用いて固液分離を行い,溶液を調整してICP分析装置を用いて溶液の化学組成を分析した.この実験から,還元剤が増加するにしたがってマンガン,微量元素の溶出が認められた.これは続成作用によって生じるとされる現象と一致しており,このことから,還元に伴う挙動は元素によって異なり,組成が変化することが明らかになった.