抄録
北イタリアFinero金雲母かんらん岩体は上部マントル起源であり,マントルウェッジでスラブ脱水による交代作用を受けているといわれている。この水がかんらん岩の塑性変形に与えた影響に着目し,塑性変形履歴を解明するために、偏光顕微鏡,電子顕微鏡(SEM/EBSD,TEM)による微細組織観察を行った。試料は全てポーフィロクラスティック組織を呈し,一部の試料はカタクレーサイト的であり破断面を伴っていた。そのような試料の観察結果を以下に示す。1)オリビンのポーフィロクラストは複雑な波動消光を示し,粒界や割れ目近傍には再結晶粒子が存在する。2)流体包有物が大量に存在する。3)ドライな環境で発達するオリビンのすべり系が,含水条件を示すすべり系に上書きされている様子が確認できた。このような特徴から,変形履歴についてモデルを提唱した。