抄録
福岡県長垂LCTペグマタイトから採取したモンブラ石-アンブリゴ石[LiAlPO4(OH)-LiAlPO4F,三斜晶系(C-1)]と結晶内部に散在するラクロワ石[NaAlPO4F,単斜晶系(C2/c)]との組織及び方位関係について透過型電子顕微鏡を用いた観察を行った。ラクロワ石はラメラ状の組織を有しており,Fに非常に乏しいモンブラ石を伴う。ラクロワ石とモンブラ石の結晶方位はほとんど等しく,Fに乏しいモンブラ石も同様である。粒界は(110)面と(1-10)面からなる。離溶または交代作用により,Fに富むラクロワ石とFに乏しいモンブラ石の2相が劈開に沿って形成されたと考えられる。離溶組織の場合は,高温相がイオン半径の小さなLiを含む空間群C-1のモンブラ石と,Naを含む空間群C2/cのラクロワ石に離溶し,集片双晶もその際に形成されたと考えられる。