抄録
天然に産するウグランダイト系列のガーネットは斜方晶系または三斜晶系の対称性を示すことがあり,結晶成長のカイネティクスによる陽イオンの秩序配列が議論されている.分域間で陽イオンの分配に違いがあるかを調べるため,本研究ではマリ産の低対称ガーネットを試料とし,{110}と{211}成長分域の結晶構造をそれぞれ調べて比較した.結晶X線回折実験の結果, {110}と{211}分域はどちらも三斜晶系の対称性を示す.YサイトのFe3+占有率を求めたところ,{110}と{211}分域ではFe3+の分配に異なる傾向が認められる.特に{211}分域のY21サイトではFe3+占有率が45.0(9) %であり,{110}分域の66.0(8) %と比べて低い.このことは異なる結晶面で成長した分域間では各サイトへの陽イオンの分配が異なり,結晶成長のカイネティクスが陽イオンの秩序配列に影響することを示唆する.