本研究では、「いかだ:烏賊だ/筏」や「こうし:子牛/格子」のように、同じかな文字表記であっても形態素分析によって意味するところが変わる同字異義の語彙に対して、事象関連電位が関与するか否かを検証した。視覚刺激として格処理に関わらないという条件で形態素数が異なる組み合わせの語彙を被験者に提示し、文字知覚から前語彙的処理を行なっていると仮定されているN170 成分およびP250 成分を含んだ電位量の比較から、形態素処理が負荷となって事象関連電位に反映するかを試みた。結果として、N170 およびP250 成分については、O1、O2、T5、T6 において増大した。しかし、部位間および形態素の数の違いに関して電位量については有意差が得られなかった。この点から、形態素処理に関しては特段の負荷がかかっていないため、事象関連電位に反映しなかったと考察した。