抄録
本研究では高温型珪線石の存在有無と安定領域の検討を目的として、珪線石の高温加熱実験および放射光粉末X線回折実験を行った。X線回折実験は、角度分解能を高めて結晶構造のわずかな差異を検出可能とするため、入射X線の波長を約1.75Åに設定して行った。実験の結果、試料のXRDパターンに珪線石、ムライトおよび、第3のピークが出現した。ピーク位置から、このピークは高温型珪線石相であると考えられる。常圧下1476℃で長時間加熱した試料については、高温型珪線石のピークは消滅し、ムライトのピークのみが残った。そのため、常圧下1476℃の条件においては、高温型珪線石は準安定な相であると考えることができる。一方、1GPa下1300℃で24h加熱した試料については、ムライトピークは出現せずに、珪線石と高温型珪線石のピークが共存していた。そのため、この高温型珪線石は安定相として出現した可能性が高い。