箱根火山地域からは黄色と無色の灰長石巨晶が産出する。XPSによる予備的な実験により黄色灰長石巨晶には3価の鉄が含まれることが示された。単結晶X線構造解析の結果、 黄色灰長石巨晶はP-1で、無色灰長石巨晶はI-1で精密化された。どちらの巨晶のT-O結合距離からもT席における高い秩序度を示唆された。黄色灰長石巨晶のT1(0z00)席でのT-O結合距離が他のAl占有席より長く、等方性温度因子が若干小さいことが特徴である。これらの結果は、よりイオン半径の大きな重い陽イオンがT1(0z00)席を占有していること、すなわちアルミニウムを鉄が置換していることを示唆している。EPMAによる化学分析値と上記の結晶構造的な特徴から、鉄は黄色灰長石巨晶ではT席を占有し、無色灰長石巨晶ではM席を占有すると考えられる。こうして、黄色灰長石巨晶における着色原因が結晶構造的に確認された。