水質汚染の原因となる有害元素の多くは陰イオンの形態で溶存する。筆者らは準安定相の相転移現象を利用した効率的な有害元素除去の検討を行っている。炭酸カルシウム鉱物の中には、モノハイドロカルサイトという準安定相が存在する。モノハイドロカルサイトは簡単に合成できる鉱物であるが、水中では溶解・再沈殿を経て時間とともに方解石や霰石といった安定相に相転移する。相転移の過程で、溶存する微量陰イオンが安定相に共沈されるのであれば、鉱物の添加のみで、効率的な共沈による有害元素の除去が期待できる。本講演ではモノハイドロカルサイトによるヒ酸の除去を例に、このプロセスの概要と意義を述べる。また、天然におけるこのプロセスの重要性を議論したい。