抄録
本研究では,下部地殻に相当する温度・圧力条件下で,水を添加した灰長石に対して変形実験を行い,灰長石の塑性変形に対する水の効果を定量的に明らかにすることを目的とする.実験はGriggs型固体圧変形試験機を用いて温度900 °C,封圧1 GPaで軸圧縮試験を行った.試料には,微細(粒径約3 μm)な灰長石多結晶体を用いた.実験前に灰長石に蒸留水を0.5 wt%加え,ウェット試料とした.高封圧の試料の強度は,低封圧の実験(< 450 MPa)から得られた拡散クリープによって変形するウェットな灰長石の構成則から予測される強度に比べて著しく低かった.また,回収した円筒試料の上部はほとんど変形しておらず,下部に変形が集中していた.薄片観察では試料下部に流動変形が示唆される線状の伸長構造がみられた.まだ変形機構は確かめられていないが,高圧下での水の効果は低圧の実験からの予測よりも大きい可能性がある.