抄録
西南日本の背弧域に位置する黒瀬のアルカリ玄武岩中に産するウェブステライト捕獲岩試料内に認められた微量元素の特異な不均質性について報告する.試料にはウェブステライトを切るかんらん石と斜長石(一部,アノーソクレースが存在する)からなる細脈が認められる.また,ウェブステライトの鉱物粒間や斜方輝石の縁辺部はしばしば細粒のかんらん石と斜長石を主体とする連晶状の組織に置換されている.輝石とスピネルは主要元素に関してはほぼ均質である.輝石類の希土類元素組成が比較的一定であるのに対し,ZrとHfの濃度の範囲は異常に広く,単斜輝石の微量元素パターンでは希土類元素に対して負異常から正異常へおよんでいる.このウェブステライト中におけるZrとHfの不均質の分布は細脈の存否と関係しており,これらをもとに相互の成因を検討した.細脈や粒間のかんらん石と斜長石はウェブステライトの両輝石とスピネルの部分的な変成作用によって形成されたもので,微量元素の不均質はこの際の元素の再分配を反映している可能性がある.