抄録
シリカ鉱物として隕石中で多く見られる単斜晶系トリディマイトは400℃以下で、六方晶系から直方晶系を経た相転移によって形成する。我々はこれまでに3つのNon-cumulate Eucrite中のシリカ鉱物に注目して、Eucrite隕石を用いた溶融・結晶化実験と合わせて熱履歴解明の研究を行ってきた。本研究ではこれまで観察した試料よりも熱変成度が高い5または6に分類されているMillbillillie中のシリカ鉱物の多様性と熱変成度との関連性について議論した。観察から、玄武岩質岩片には粗粒な輝石や斜長石の付近に単斜晶系トリディマイトと石英が存在していた。確認された組織から、どちらも熱変成による相転移によって晶出したと考えられる。また、存在したトリディマイトがすべて単斜晶系であったことから、この隕石は少なくとも直方晶系トリディマイトを持つ隕石よりも400℃以下で遅く冷却されたことが推測される。これは、シリカ鉱物と共に粗粒な輝石や斜長石が存在していることとも調和的である。以上のことから、Millbillillie隕石は一度急冷された後に埋没され、強い熱変成を受けたことが考えられる。