日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2017年年会
セッションID: S1-05
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S1:火成作用に関する物質科学の新展開(スペシャルセッション)
オマーンマントルかんらん岩からみた初期島弧マントルの酸化還元状態とフラックス溶融との関係
*高澤 栄一谷 雅史田村 芳彦
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抄録

V/Sc比およびZn/Fe比はアセノスフェアの酸化還元状態を凍結する指標として有効である。マントルが酸化的な状態下で部分溶融をすると,還元的な場合よりも溶け残りかんらん岩のV/Sc比は小さくなり,Zn/FeT比は大きくなる。オマーンオフィオライトのマントルセクションのハルツバージャイトのV/Sc比は2.5-5.5で,Zn/FeT比は7-10であった。V/Sc比とZn/FeT比は,各岩石のdelta logfO2 (FMQ) とそれぞれ負および正のよい相関を示し,酸化還元状態の傾向は一致する。さらに,V/Sc比とZn/Fe比はお互いに負の相関を示し,高V/Sc & 低Zn/Feのものは酸化的,低V/Sc & 高Zn/Feのものはより還元的な傾向を示す。これらのかんらん岩全岩のREE量は,酸化的なものほどLa量は高く,Yb量は低くなる傾向を示す。この関係は,マントルウェッジ内のフラックス溶融の結果を反映している可能性が考えられる。すなわち,沈み込んだスラブから酸化的な流体がもともと還元的なマントルウェッジに流入し,フラックス溶融を引き起こし,溶け残りかんらん岩に酸化的な状態を記録した。

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