抄録
オレンジ方解石の着色要因はマンガン酸化物による可能性が高いことを明らかにした.合成直後は淡桃色を呈していた生成物が,濾過後,蒸留水で洗浄乾燥中に褐色に変化したこと,濾過後直ちにエタノールで洗浄乾燥した試料は淡桃色のままであったことから,蒸留水による方解石-菱マンガン鉱固溶体の溶解およびマンガン酸化物の沈殿が示唆された.
マンガン酸化物が生じないように処理した合成方解石-菱マンガン鉱固溶体の色彩色差計での測定では,Mnの増加に対してほぼ赤色成分のみが直線的に増加する傾向を示し,オレンジ方解石の傾向とは一致しなかった.このことから,オレンジ方解石の着色要因としてMn酸化物による可能性が示唆される.