抄録
ラッセル鉱の構造は Bi2O2 層と WO4 層の相互積層で説明される。この構造について局所的な対称性の低下や積層方向への積層不正が提案されている。
フラックス法を用いて育成した高品質のラッセル鉱単結晶を試料とし、四軸回折計を用いて構造を検討した。Bi の孤立電子対に対応すると思われる残差密度は Bi を通って Bi2O2 層に垂直な直線上にあるので、BiO8 反四角柱内部での Bi の変位は孤立電子対電子と酸素との反発によるものではない。配位多面体の変形、回転、傾きを整理すると、Bi2O2 層の中央にある酸素原子レイヤーの変位の反転は b に沿った連晶を生じ、ランダムな反転は局所的な対称性の乱れと A 底心で禁制な回折線の強度増加とを生じる。