超臨界地熱貯留層を形成する流体は,主としてスラブの脱水によると推定されるが,スラブの脱水が最終的に地殻に対してどの程度の流体の供給をしているかは,沈み込み帯全体での水の循環(物質収支)から考える必要がある
下部地殻においては,珪長質メルトの貫入に伴う被貫入岩体の変成作用の結果生じた加水作用から,メルトから供給される流体量と,被貫入岩体をとりこんだ(加水した)量を求め,より上部の地殻に供給可能な流体量を予測した.東南極 セールロンダーネ山地のグラニュライト相での解析からメルト中のH2O含有量(5.6-5.0 wt %)のうち,3.7wt%が被貫入岩でトラップされ,残りの1.9-1.3wt%が系外に排出される(Uno et al., 2017).
上部地殻においては,火山とカルデラを対象に,カルデラ充填物の中のメルト包有物の解析から,マグマの減圧に伴いマグマ系外に排出される流体量を見積もり,カルデラ内に供給される流体量を,15 ton/year/meterと推定している.