抄録
ケイ酸塩ガラス中の水の拡散について,任意ガラス組成に応用可能な水の拡散モデルを,pre-exponential factorのガラス組成依存性に注目して構築した.水の拡散係数のpre-exponential factorは,主に水分子の振動数・水分子のジャンプの距離に依存し,ガラス組成によらず似通った値になると予測される.本研究では,このpre-exponential factorの組成依存性は,水の拡散に必要な活性化エネルギーが,ガラス構造に依存するために生じると考えた.ガラスに含まれる水や修飾体イオンは,ガラスの構造を変化させ,水の拡散に必要な活性化エネルギーを下げると予測される.ガラス中の水の拡散モデルに,このガラス構造変化の効果を考慮すると,pre-exponential factorのガラス組成依存性は小さくなり,任意ガラス組成中の水の拡散係数は,同一の分子メカニズムで説明可能であることが示唆された.