抄録
栗橋花崗岩体は、北上山地中央部に位置する深成岩体の一つであり、岩体南部には唯一の金属鉱床として金スカルン鉱床を胚胎している。栗橋岩体を構成する岩石は、主に花崗閃緑岩~トーナル岩に分類された。これらの岩石に含まれる石英には流体包有物が見られ、斜長石にはアルバイトリムと呼ばれる組織が見られた。本研究ではそれらの鉱物組織の観察に加え、鉱物化学組成、全岩化学組成の分析結果から、栗橋岩体の冷却環境と鉱床形成との関連性について検討した。その結果、栗橋岩体は岩体全域が同源マグマから分化し、その大部分は高圧下で固結したため鉱床をほとんど形成しなかったが、岩体南端部は例外的に熱水の影響を強く受けたため、岩体で唯一の金属鉱床が形成したと推定された。