抄録
長野県大鹿地域には,中央構造線(MTL)沿いにマイロナイト帯が広く分布する。このマイロナイト中にはざくろ石・雲母類・グラファイトを多く含む泥質マイロナイトが狭在し、それら変成鉱物はマイロナイトのポーフィロクラストとして残存していると考えられてきた。しかし残存するざくろ石はMTL中軸部ではコアからリムに向かいXGrs成分が増加する組成累帯構造を示す。また白雲母もPhengite成分の増加が認められた(Si/11 = 3.36~3.5 a.p.f.u.)。一方で黒雲母のXMgは 0.45~0.54から0.2~0.26まで低下する。この結果より既存の地質温度計・圧力計を利用するとMTLから約500m以上離れた地域では590~600℃, 0.3~0.45 GPaの変成温度圧力条件を示す。一方でMTLから500m以内の地域は400~540℃,~0.9 GPaの温度圧力条件で形成されたことが示唆された。つまり鹿塩マイロナイト帯は異なる温度圧力条件・変形作用を履歴したマイロナイトによって構成されていることが考えられる。