抄録
本研究では吾妻火山完新世火砕堆積物中の非本質火山灰について岩石学的観察を行った.分析試料はそれぞれ,Az-JPA,Az-JPB,Az-OA,Az-JPC,Az-JP7から採取した.バルクXRD分析では,Az-OA以前の試料はスメクタイト,カオリン鉱物の明瞭なX線ピークを示し,Az-OA以降の試料は斜長石,輝石,角閃石族鉱物の強いX線ピークを示した.SEM-EDSによる試料観察から以下のことが明らかになった.Az-OAの試料は酸性変質した火山灰粒子に富み,多くは珪化岩およびシリカ鉱物,カオリン鉱物,パイロフィライトを伴う高度粘土化変質岩である.イライト,セリサイト,黒雲母,緑泥石,カリ長石を伴う中性熱水変質岩も産する.対して,Az-JP7の試料は極めて結晶度の良い未変質な安山岩片を多く含む.石基は石英およびアルカリ長石を伴うインターサータル組織を示す.以上より次の進化モデルが考えられる.Az-OA噴火以前には地下に累帯する変質帯が発達していた.そしてAz-OA噴火時に貫入したマグマが地下浅部で固まり溶岩プラグを形成し,この後の噴火ではプラグが破壊されて半深成岩的な岩片が放出された.