抄録
わり算が苦手な5年生の児を対象に,特別支援学校のセンター的機能を通し,わり算の効果的な指導方略を検討した。算数の学習状況調査や認知能力検査等の事前アセスメントから,わり算のつまずきには,①九九の自動化の未達成,②筆算の手順の理解不足,③商の値の見当のつきにくさ,④桁を揃えることの困難さが推測された。さらに,わり算の困難さの背景にある認知特性として,継次処理能力,ワーキングメモリ,空間認知の弱さがあった。そして,A児の認知特性と合致した指導方略とし,九九の自動化教材,わり算手順表,わり算ヒントカード,升目ノートを導入した。指導の結果,①②④については,一定の効果が確認されたが,③商の値の見当をつけることの困難さが際立った。また,特別支援学校がセンター的機能を通じ,学習指導をすることは一定の効果があった。今後の課題として,商の値の見当をつけるため,より合理的な指導方略の検討が必要であった。