2020 年 29 巻 1 号 p. 33-44
本研究は,年長時の読み書きの発達が小学1年時の書字習得度を予測する指標となるかを検討するため,年長時に保育士が記入したチェックリストと小学1年時に担任が実施したひらがな書称課題(以下,ひらがな書字課題)の結果を比較した。その結果,チェックリストの「しりとり」に関する項目とひらがな書字課題の「音韻に関する誤り」,また,チェックリストの「自分の名前を正しくひらがなで書くことができる」「まねて三角形を描ける」とひらがな書字課題の「文字形態の誤り」「文字想起困難・未記入」との間に有意差がみられた。今回の結果は年長時点でのしりとりの可否および名前の書字の可否が,小学1年時の平仮名書字における誤りの特徴や生起数に影響することを示唆している。今後は,この2要素が書字の正しい習得に与える影響を検討するため,追跡調査が必要である。