抄録
本研究では,保護者と担任を対象に,場面緘黙と不登校を呈した自閉スペクトラム症児に対する協働型行動コンサルテーション(Conjoint behavioral consultation : 以下,CBC)を実施した。コンサルタントは直接支援を行わず,保護者と学級担任が家庭・学校場面において,自閉スペクトラム症の特性に応じた,不登校と緘黙症状に対する支援を行った。その結果,対象児は毎日登校し,学校での活動への参加行動の増加およびコミュニケーション手段や内容の拡大がみられた。保護者と学級担任は支援を受け入れやすいと評価し,両者のコミュニケーションの増加が確認された。保護者と教師の協働を促すCBCは,学校現場で用いられるモデルになりえると考えられる。しかしながら,学校での対象児の発話はみられず,支援の効果に関する項目で学級担任の評価は低く,母親も他の項目に比べて一部低かった。対象児の変化をもたらした要因および今後の支援,CBCの効果的な条件について考察した。